日米ガイドライン改定による集団的自衛権行使容認に反対する声明
2014年7月1日、集団的自衛権の行使容認の閣議決定をした安倍政権は、引き続き集団的自衛権の行使にむけた政治をすすめている。そうした政治の一環として、2014年10月8日、日米両政府は「日米防衛協力のための指針」、いわゆる「日米ガイドライン」改定の「中間報告」を発表した。「日米ガイドライン」改定により集団的自衛権行使を目指す安倍政権の手法も「国の最高法規」(憲法98条1項)である憲法との関係で重大な問題がある。
現行の日米安全保障条約の改正交渉の際、アメリカは「ヴァンデンバーグ決議」(1948年)に基づき、日本に「相互援助」を求めた。しかし、アメリカの戦争に巻き込まれることを危惧した当時の日本政府は「海外で武力行使をする集団的自衛権は憲法上認められない」旨の主張をして、アメリカの要求に抵抗した。アメリカ政府も、内灘事件、砂川事件、ジラード事件などの米軍基地闘争が激化するなどの状況の中、日本の中立化を恐れて「海外派兵は憲法上認められない」という日本政府の主張を受け入れた。こうした日米両政府の交渉の末に改正された「日米安全保障条約」(1960年)でも、日米が共同で対処するのは「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」(5条)であり、海外での日米共同の武力行使が条約上の義務とはされていない。つまり、日本が海外でアメリカと一緒に武力行使をするという意味での「集団的自衛権」は日米安全保障条約では認められていない。ところが今回改定されようとしている「日米ガイドライン」は、60年の安保国会で大きな論戦となった「極東」の範囲や、97年のガイドラインでの「周辺事態における後方地域支援」という地理的および権限の制約を取り払い、地球のあらゆる場所での日米共同の武力行使、「集団的自衛権」を可能にさせようとするものである。
「条約」は形式的効力において法律以上に効力を持つなど、国民の権利・義務に重大な影響を及ぼすことから、その改正には主権者である国民に選ばれた国会議員で構成される「国会」の承認が必要とされている(憲法73条3号)。にもかかわらず、実務的合意レベルの「指針」にすぎない「ガイドライン」で上位規範である「日米安全保障条約」の内容を実質的に変える行為、日米安全保障条約で認められていない「海外派兵」を「指針」にすぎない「ガイドライン」の改定で認める行為は「安保条約の下克上」であり、条約改正に際して国会承認を要件とする憲法73条3号、「議会制民主主義」との関係で大いに疑問があると言わざるを得ない。
そもそも集団的自衛権の行使は、多くの市民の生命や健康を危機にさらし、日本国憲法の基本原理である「基本的人権の尊重」「平和主義」とは相容れない。それゆえ、「日米ガイドライン」改定により集団的自衛権の行使を認めようとする安倍政権の政治も「基本的人権の尊重」「平和主義」からは決して認められるものではない。のみならず、「日米ガイドライン」改定で日米安全保障条約の内容を実質的に改正しようとする安倍政権の政治手法も憲法73条3号、「議会制民主主義」との関係で大いに問題がある。「戦争をさせない1000人委員会あいち」はこうした「日米ガイドライン」改定に対しても強く抗議する。
2014年10月16日
戦争をさせない1000人委員会あいち
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(事務局長 飯島滋明:名古屋学院大学准教授、憲法学・平和学)